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東京地方裁判所 昭和46年(行ウ)238号 判決 1987年3月30日

原告

兼田勝久

右訴訟代理人弁護士

東城守一

仲田晋

平田辰雄

被告

郵政大臣 唐澤俊二郎

右指定代理人

井上弘幸

崇嶋良忠

佐々木英治

岡田敏男

山下和久

山口英夫

中川賢策

寺沢誠

東秀孝

主文

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  原告

1  被告が原告に対して昭和四五年六月六日付けでした免職処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

二  被告

主文と同旨の判決を求める。

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  原告は郵政事務官として杉並郵便局第一集配課に勤務していたものであるが、被告は、昭和四五年六月六日、原告に対し、国家公務員法(以下「国公法」という。)七八条及び人事院規則一一―四に基づき、免職処分(以下「本件処分」という。)をした。

2  しかし、右処分は処分の理由が存在しないのにされたもので違法であるから、その取消しを求める。

二  請求の原因に対する答弁

請求原因第一項の事実は認める。同第二項の主張は争う。

三  抗弁

1  原告の経歴

原告は、昭和四〇年四月一日付けで杉並郵便局(以下「杉並局」という。)に採用され、集配課(昭和四四年一一月二五日からは組織変更により第一集配課)勤務を命ぜられて郵便集配の業務に従事していたが、その間、昭和四三年一月一三日付けで減給(六月間俸給月額の一〇分の一)の懲戒処分、同四四年八月二日付けで戒告の懲戒処分、同四五年一月一四日付けで減給(二月間俸給月額の一〇分の一)の懲戒処分及び同年二月一三日付けで減給(六月間俸給月額の一〇分の一)の懲戒処分を受けていたものである。

2  処分の理由

(一) 被告は、原告を国公法七八条一号の「勤務実績がよくない場合」及び同条三号の「その他その官職に必要な適格性を欠く場合」に該当するものとして免職処分としたものであるが、右各号に該当する具体的な事実の詳細は、別紙(略)第一記載のとおりである。その要点を述べれば次のとおりである。

(1) 無断欠勤・遅刻等

原告は、昭和四三年三月から昭和四五年四月までの約二年の間に、延べ八回もの突発的な無断欠勤を繰り返し、その都度上司による指導、訓戒を受けていたにもかかわらず、何ら改善が見られなかった。更に、原告は、採用後一年を過ぎたころから「寝ぼうした」などと称して月二、三回程度遅刻を繰り返していたほか、遅刻等による欠務処理を、昭和四二年一五回、同四三年二三回、同四四年三二回、同四五年一月から五月までに三五回も受け、しかもこの欠務処理の大半が遅刻ないし就労遅延によるものなど著しく乱れた勤務態度を継続させていた。

(2) 勤務時間中の態度

原告は、区分作業中は郵便物を焼失、損傷するおそれがあるので、喫煙を禁止されていたにもかかわらず、これを無視して度々くわえタバコで喫煙した。また、原告は、勤務時間中定められた制服を着用せずに、かえって、上司から注意されていたにもかかわらずワイシャツの裾は出し放し、ボタンははずれ放し、あるいはベルトの代りに紙ひもで結わえてみたりするなど、その服装が乱れていた。更に、原告は、用もないのにトイレに行くなどと称してみだりに席を離れたり、作業の手を休めてしばしば雑談にふけったりした。

(3) 作業能率等

原告の区分作業能率及び配達作業能率は、当時の杉並局集配課員の一般的能率にくらべてその七、八割程度という極めて低いものであったところ、原告が主張する、いわゆる闘争期間内においては、それが更に極端に低下した。その上、この低能率を解消するため、模範的な作業方法、能率を有する職員の作業を見習わせ、実地指導を行って原告の能率が向上するよう再三訓練したが、原告は「無意味だ」などといってこれらの指導を無視し、訓練を拒否した。

また、原告は、郵便物取集に従事した際、受持箇所全部からの取集が完了していなかったにもかかわらず、未取集箇所を放置したまま予定帰局時間より早く帰局し、あるいは取集便札を一箇所に差し入れて取集箇所全部からの取集が終了したかのように偽装して職務を怠った。そして、原告は、このことを上司から注意されても何ら反省せず、かえって反抗する言動をとった。

(4) 上司に対する暴言、侮辱的言動及び反抗的言辞

原告は、採用後一年を経過したころから、上司の作業指示や業務命令に対してそれに従わなかったばかりでなく、かえって上司に対して、「うるさい。」、「ぐずぐずいうな」、「この馬鹿野郎」、「無能次長」、「ふざけるな」などと職場における上司に対する発言としては到底許されない暴言や侮辱的言動を繰り返す一方、「平常能率でやっている」、「その辺でぶらぶらしている人よりはましだ。」などと種々の反抗的言辞をろうして、その指示や命令に反抗していた。

(二) 以上のような原告の無断欠勤や遅刻、勤務時間中の喫煙、服装、離席や雑談などの態度、極めて低い作業能率からみて、原告の勤務実績は、客観的かつ公正にみて明らかに勤務実績不良と評価することができる。また、右の各事実のほか、上司の指示、命令に対する無視の態度、更には上司に対する暴言、侮辱的言動や反抗的言辞等を総合勘案すると、原告に郵便外務職員ないしその他の郵政職員として必要な適格性である自己の職務に対する責任感、積極性、勤勉性、規律性ないし服務規律に対する認識が欠如していることは明らかである。しかも、原告は、昭和四五年二月一三日付けで減給六月の懲戒処分に付されたが、それまでにも三回にわたって懲戒処分に付され、それらにより、郵便外務職員ないしその他の郵政職員として必要な適格性である自己の職務に対する責任感、積極性、勤勉性、規律性ないし服務規律に対する認識を有するよう期待されてきたにもかかわらず、その態度を改めなかったのである。これらの事情を考え併せると、原告には郵便外務職員に必要な適格性が欠けているというべきである。

四  抗弁に対する答弁

1  抗弁第一項の事実は認める。

2  抗弁第二項の事実について

被告が処分理由に該当するとして主張する具体的事実に対する答弁は、別紙第二記載のとおりである。これを要するに、本件分限免職の理由とされた事実は、ごく一部を除いては、次に述べるように、全逓信労働組合(以下「全逓」という。)の本部、東京地方本部(以下「東京地本」という。)又は杉並支部が実施した闘争の期間中に限り、組合(全逓、東京地本又は杉並支部をいう。以下同じ。)の指令、指導に忠実に従って行ったりやめたりした行為であって、原告の個人的な行動ではない。従ってこれらの事実が公務員の特定の非違行為に対する制裁である懲戒処分の理由となることはあり得ても、国家公務員としてその官職に必要な適格性を欠く場合に当たることはない。

五  原告の主張

1  組合の闘争と原告の行為との関係

(一) 昭和四二年の集中処理局反対闘争及び年末闘争

全逓は、昭和四二年七月から九月にかけて集中処理局反対闘争を行ったが、その戦術としては、関東地方本部傘下の各支部に関しては、七月二一日以降の三六協定締結拒否戦術と業務規制闘争を基本とし、八月二五日以降はスト突入体制の確立によって戦術を強化し、九月一日以降は全国的に「三六協定の締結を拒否し、時間外労働、休日労働拒否戦術に突入」すると共に、東京地本傘下の一部拠点支部においては九月一日に半日ストを実施し、同地本傘下のその他の支部においては九月三日に半日ストに突入し得る体制を確立するというものであった。この闘争は九月初めころ終了した。

また、全逓は同年一二月に年末闘争を実施したが、その戦術は、「三六無協定戦術を採用し、電撃的、即効的物だめ闘争を全国的に展開して解決を図る」というものであった。この闘争は一二月五日に妥結した。

右集中処理局反対闘争及び年末闘争に関し、昭和四三年一月一三日全逓組合員に対する大量の懲戒処分が発令されたが、原告の第一回の懲戒処分はその中の一つである。この処分の理由とされた行為が行われたのは、集中処理局反対闘争においてスト突入体制の確立によって闘争戦術が強化された当日の八月二五日を始めとし、翌二六日、九月七日、一〇月四日及び年末闘争妥結前日の一二月四日の計五日に限られ、いずれも組合の指令、指導に忠実に従って行われたものである。

(二) 昭和四四年の春闘及び合理化反対闘争

全逓の昭和四四年の春闘は、四月一二日決戦段階に突入し、五月一四、一五日ころ仲裁裁定が出されて、その後に終結し、また、合理化反対闘争は六月一七日に開始されて、七月二六日に終結した。

右各闘争に関し、全逓組合員に対して八月二日付けで第三次懲戒処分が発令されたが、原告の受けた第二回懲戒処分はその中の一つである。処分の理由とされた行為は、三月一一日の無断欠勤(個人的な非違行為である。)を除き、いずれも闘争期間中に組合の指令・指導に従った行為である。

(三) 昭和四四年年末闘争

全逓の昭和四四年の年末闘争は一一月一六日に始まって、一二月五日に妥結した。この闘争における主要な戦術は業務規制闘争であった。この闘争に関し、杉並支部においては合計二二名が懲戒処分を受けたが、原告の第三回懲戒処分はその中の一つである。処分の理由とされた行為は、いずれも右闘争中、組合の指導の下に業務規制闘争として行われたものであって、原告の個人的な行為ではない。

(四) 杉並局における労務政策変更闘争

東京郵政局は、昭和四五年一月二六日約二六名の同局職員から成るいわゆる「対策班」、組合側のいう「監視班」を杉並局に派遣して、杉並局管理者らと共に組合員の作業に対する監視、干渉に当たらせたため、杉並支部組合員はこれに反発して激しい労使紛争が発生し、全逓は、総力を挙げていわゆる労務政策変更闘争を展開し、その闘争は四月九日一応の妥結を見た。この闘争において全逓が採用した主な戦術は業務規制闘争である。

この闘争に関し、闘争中の同年二月一三日杉並支部において一四名の懲戒処分がされたが、原告の第四回懲戒処分はその中の一つである。処分の理由とされた行為は、すべて一月二七日以降の右闘争中、組合の指導の下に業務規制闘争として行われたものであって、原告の個人的な行為ではない。

更に、右闘争終了後の同年五月二日付け及び六月六日付けで多数の処分が発令されたが、原告に対する本件処分もその中の一つである。処分の理由とされた行為は、同年二月九日から四月二四日までの行為が大部分であるが、三月一九日及び四月二四日の欠勤を除き、いずれも組合の指導の下に業務規制闘争として、あるいは、これに関連して行われたものであって原告の個人的行為ではない。

2  分限処分は、公務員の特定の非違行為に対する制裁である懲戒処分とは、制度の趣旨、目的を異にし、非違行為に関する場合にも、個々の行為に対する責任の追及ではなくて、「その官職に必要な適格性」の有無が専ら問題となる処分である。そして、「その官職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合」をいうものと解される(最高裁二小判昭和四八年九月一四日民集二七巻八号九二五頁)。ところで、被告が本件処分の理由として主張する事実は、ごく一部のものを除けば、全逓全体あるいは杉並支部が実施した闘争の期間中に限り、組合の指令、指導に忠実に従って行ったり、やめたりした行為であって、原告の個人的な行動ではなく、他方平常時における原告の勤務実績は良好で、勤労意欲の点においても、作業能率の点においても問題がなかった。従って、原告につき「その官職に必要な適格性」を欠くとは到底いうことができない。

六  原告の主張に対する反論

原告は、本件処分の理由とされた具体的事実のほとんどが全逓の組合員としての立場における行為であって、いずれも正当な行為であるか、とるに足りない小さな非行にすぎないものであり、分限免職の理由にはなり得ないと主張する。

しかし、原告の無断欠勤や遅刻、勤務時間中の服務規律無視の態度などはおおむね全逓組合員としての行為とはいえない事実である。また、上司に対する暴言、侮辱的言動や反抗的言辞についても、それらがたまたま原告が主張する闘争期間中に行われたものであっても、それらは本来全逓の闘争とは直接関係のないものである。更に、作業能率についても、原告は、日常においても、もともと作業能率が他の一般職員に比べて低かった上、それが闘争期間中となると、より一層極端に作業能率が低いものとなった。この原告の態度は、決して全逓の組合員としての付和雷同的なものではなく、積極的に他の組合員より一歩突出した形で現われていた。すなわち、原告は、日常から郵便外務職員ないしその他の郵政職員として必要な適格性である自己の職務に対する責任感、積極性、勤勉性、規律性ないし服務規律に対する認識が欠如していたが、闘争期間になると、組合活動に名をかりて、それを一層増幅して顕出させたものであり、原告が闘争期間中の行為と主張するものは、その期間中のみの特異な行動ではなく、原告の郵便外務職員ないしその他の郵政職員として必要な適格性欠如を徴表する氷山の一角にすぎない。

第三証拠(略)

理由

一  原告の経歴及び本件処分の存在

原告が昭和四〇年四月一日付けで杉並局に採用され、集配課(昭和四四年一一月二五日からは組織変更により第一集配課)勤務を命ぜられて郵便集配の業務に従事していたこと、原告は、その間、昭和四三年一月一三日付けで減給(六月間俸給月額の一〇分の一)の懲戒処分、同四四年八月二日付けで戒告の懲戒処分、同四五年一月一四日付けで減給(二月間俸給月額の一〇分の一)の懲戒処分及び同年二月一三日付けで減給(六月間俸給月額の一〇分の一)の懲戒処分を受けたこと、被告が同年六月六日付けで、原告に対し、国公法七八条及び人事院規則一一―四に基づき免職処分(本件処分)をしたことは、当事者間に争いがない。

二  処分の理由となる具体的事実(別紙第一記載の各事実について)

1  無断欠勤・遅刻等

(一)  無断欠勤(別紙第一の1の(一))

(1) (証拠略)によれば、(1)の事実が認められる。

(2) (証拠略)によれば、(2)の事実が認められる。

(3) (証拠略)によれば、(3)の事実が認められる。

(4) (証拠略)によれば、(4)の事実が認められる(このうち、原告が昭和四四年三月一一日勤務を欠いたこと及び翌日その理由を尋ねられたことは、当事者間に争いがない。)。

(5) (5)のうち、原告が昭和四四年七月一三日、一日勤務を欠いたことは当事者間に争いがない。(証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、原告は当日行われた全逓の指令による闘争に参加するため年次有給休暇の請求をしたが、承認されなかったことが認められる。

(6) (証拠略)によれば、(6)の事実が認められる(このうち、原告が昭和四四年三月一九日、一日勤務を欠いたことは、当事者間に争いがない。)。

(7) (7)の事実は当事者間に争いがない。

(8) (証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、(8)の事実が認められる(原告が昭和四五年四月二四日、一日勤務を欠いたことは、当事者間に争いがない。)。

(二)  遅刻等(別紙第一の1の(二))

(証拠略)によれば、原告は、昭和四二年に一五回、同四三年に二三回、同四四年に三二回、同四五年(免職処分を受けた六月六日まで)に三五回の欠務処理をされており、その多くは遅刻によるものであることが認められる。

また、(証拠略)によれば、(2)アの事実が認められ、(証拠略)によれば、(2)イの事実が認められる。なお、(2)アの事実については、(証拠略)の各証言及び原告本人尋問の結果によれば、杉並支部においては、集配課の職員については五分間程度の更衣時間は勤務時間に含まれるべきであるとの見解をもち、組合員に対し勤務時間開始後に更衣を行うよう指導し、原告はこの指導に従って勤務時間開始後に更衣を行ったことが認められる。

2  勤務時間中の態度について

(一)  喫煙(別紙第一の2の(一))

(証拠略)によれば(2)アの事実が、(証拠略)によれば、(2)のイの事実が、乙第三九号証及び同証人の証言によれば、(2)ウの事実が、それぞれ認められる。

(二)  服装(別紙第一の2の(二))

(証拠略)の各証言及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、局内における勤務中にワイシャツのすそを出し放しにしたりし、上衣のボタンを外し放しにしたり、また、タオルを首に巻いたり、鉢巻きにしたりし、更に、ベルトの代りにゆわえた紙ひもをする等乱れた服装をすることがあり、上司から注意されたことが認められる。

(三)  勤務時間中の離席、雑談(別紙第一の2の(三))

(証拠略)によれば(2)アの事実が認められ、(証拠略)によれば(2)イの事実が認められ、(証拠略)によれば(2)ウの事実が認められる。また、(人証略)の各証言によれば、原告は、勤務時間中の離席や他の職員との雑談が多く、上司からしばしば注意を受けたことがあるが認められる。

3  作業能率等(別紙第一の3)

(一)  個別的事実について

(1) (証拠略)によれば、(二)の(1)の事実が認められる。

(2) (証拠略)によれば、(二)の(2)の事実が認められる。

(3) (証拠略)によれば、(二)の(3)の事実が認められる。原告は、時間内に持出郵便物を完配することは困難であったと主張するけれども、(証拠略)によれば、完配は可能であったと認めることができる。

(4) (証拠略)によれば、(二)の(4)の事実が認められる。

(5) (二)の(5)の事実は当事者間に争いがない。

(6) (二)の(6)の事実も、当事者間に争いがない。

(7) (証拠略)によれば、(二)の(7)の事実が認められる(取集一号便につき二・三か所しか取集できずに一二か所は未取集であったこと、取集二号便につき二八か所しか取集できずに七か所は未取集であったことは、当事者間に争いがない。)。原告は、当時の実情からみて全部の取集をすることは不可能であったと主張するが、右各証人の各証言によれば、原告は当日は業務規制闘争の手段として上司の指示に反して平常の取集の方法とは異った方法をとったため全部の取集ができなかったことが認められるので、原告の主張は採用できない。

(8) (証拠略)によれば、(二)の(8)の事実が認められる(取集二号便、取集三号便及び取集四号便における取集か所については争いがない。)。

(9) (証拠略)によれば、(二)の(9)の事実が認められる(大区分作業について荻野副課長から業務命令を受けたことは争いがない。)。

(10) (証拠略)によれば、(二)の(10)の事実が認められる。

(11) (証拠略)によれば、(二)の(11)の事実が認められる。

(12) (証拠略)によれば、(二)の(12)の事実が認められる。

(13) (証拠略)によれば、(二)の(13)の事実が認められる。

(14) (証拠略)によれば、(二)の(14)の事実が認められる。

(15) (証拠略)によれば、(二)の(15)の事実が認められる。

(16) (証拠略)によれば、(二)の(16)の事実が認められる。

(17) (証拠略)によれば、(二)の(17)の事実が認められる。

(18) (証拠略)によれば、(二)の(18)の事実が認められる。

(19) (証拠略)によれば、(二)の(19)の事実が認められる。

(20) (証拠略)によれば、(二)の(20)の事実(なお、原告の大区分作業能率は二分間当り平均約一五通)が認められる。

(21) (証拠略)によれば、(二)の(21)の事実が認められる。

(22) (証拠略)によれば、(二)の(22)の事実が認められる。

(23) (証拠略)によれば、(二)の(23)の事実が認められる。

(24) (証拠略)によれば、(二)の(24)の事実が認められる。

(25) (証拠略)によれば、(二)の(25)の事実が認められる。

(26) (証拠略)によれば、(二)の(26)の事実が認められる。

(27) (証拠略)によれば、(二)の(27)の事実が認められる。

(28) (証拠略)によれば、(二)の(28)の事実が認められる。

(29) (証拠略)によれば、(二)の(29)の事実が認められる。

(30) (証拠略)によれば、(二)の(30)の事実が認められる。

(31) (証拠略)によれば、(二)の(31)の事実が認められる。

(32) (証拠略)によれば、(二)の(32)の事実が認められる。

4  上司に対する暴言、侮辱的言動及び反抗的言辞(別紙第一の4)

(1)  (証拠略)によれば、(二)の(1)の事実が認められる。

(2)  (証拠略)によれば、(二)の(2)の事実が認められる。

(3)  (証拠略)によれば、(二)の(3)の事実が認められる。

(4)  (証拠略)によれば、(二)の(4)の事実が認められる。

(5)  (証拠略)によれば、(二)の(5)の事実が認められ、この認定に反する原告本人尋問の結果は信用できない。

(6)  (証拠略)によれば、(二)の(6)の事実が認められ、この認定に反する原告本人尋問の結果は信用できない。

(7)  (証拠略)によれば、(二)の(7)の事実が認められる。

(8)  (証拠略)によれば、(二)の(8)の事実が認められる。

(9)  (証拠略)によれば、(二)の(9)の事実が認められる。

(10)  (証拠略)によれば、(二)の(10)の事実が認められる。

(11)  (証拠略)によれば、(二)の(11)の事実が認められる。

(12)  (証拠略)によれば、(二)の(12)の事実が認められる。

(13)  (証拠略)によれば、(二)の(13)の事実が認められる。

(14)  (証拠略)によれば、(二)の(14)の事実が認められる。

(15)  (証拠略)によれば、(二)の(15)の事実が認められる。

(16)  (証拠略)によれば、(二)の(16)の事実が認められる。

5  まとめ

以上認定の各事実によると、原告は、無断欠勤や遅刻が多いこと、勤務時間中の態度も禁止されている喫煙をしたり、服装が乱れたり、離席が多い等勤務の態度が良好でないこと、作業の能率が低いこと、上司に対し暴言をはいたり、侮辱的言動や反抗的言辞が多いことなど被告が本件処分の理由として主張する具体的事実が存在することが認められる。

三  国公法七八条一号及び三号該当性の有無

1  国公法七八条所定の分限制度は、公務の能率の維持及びその適正な運営の確保の目的から同条に定めるような処分権限を任命権者に認めるとともに、他方、公務員の身分保障の見地からその処分権限を発動し得る場合を限定したものである。そして、同条三号にいう「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の簡単に矯正することのできない持続性を有する素質、能力、性格等に基因してその職務の円滑な遂行に支障があり、又は支障を生ずる高度の蓋然性が認められる場合をいうものと解されるが、この意味における適格性の有無は、当該職員の外部に現われた行動、態度に徴して判断するほかはない。その場合、個々の行為、態度につき、その性質、態様、背景、状況等の諸般の事情に照らして評価すべきことはもちろん、それら一連の行動、態度については相互に有機的に関連づけてこれを評価すべく、更に当該職員の経歴や性格、社会環境等の一般的要素をも考慮する必要があり、これら諸般の要素を総合的に検討したうえ、当該職に要求される一般的な適格性の要件との関連においてこれを判断しなければならないのである(最高二小判昭和四八年九月一四日・民集二七巻八号九二五頁参照)。そして、国公法七八条一号の勤務実績がよくない場合についても右と同様の観点から判断することを要するのである。

2  そこで、以上のような観点から、原告に国公法七八条一号及び三号に該当する理由があるか否かについて検討することとするが、原告は、被告が本件処分の理由として主張する具体的事実の多くは、全逓全体あるいは杉並支部が実施した闘争の期間中に限り、組合の指令、指導に忠実に従って行ったり、やめたりした行為であって、原告の個人的な行為ではなく、従って、これらの事実によって、原告が国家公務員としてその官職に必要な適格性を欠くとすることはできないと主張しているので、まず、この点について考える。

(証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、全逓は昭和四二年七月から一〇月にかけて東京地区における集中処理局反対闘争を実施し、その戦術として三六協定締結拒否及び業務規則闘争を採用し、杉並支部においてもこれに参加したこと、別紙第一の1の(二)の(2)ア、3(二)のうち(1)ないし(3)、4(二)の(1)ないし(4)の行為は、いずれも右反対闘争期間中にその戦術の一環として行われた行為であること、全逓は、同年一二月に年末闘争を実施し、その戦術として、三六無協定戦術及び物だめ闘争を採用し、杉並支部においてもこれに参加したこと、別紙第一の3(二)の(4)の行為は、右闘争期間中にその戦術の一環として行われた行為であること、右集中処理局反対闘争及び年末闘争に関し、昭和四三年一月一三日全逓組合員に対し大量の懲戒処分が発令され、杉並支部においても、停職三月二名、停職一月一名、減給六月三名、減給二月七名、減給一月一〇名、戒告二〇名計四三名が懲戒処分を受けたが、原告はこのうち減給六月の処分を受けたことが認められる。

次に、(証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、全逓の昭和四四年春闘は、同年四月一二日に決戦段階に突入し、同年五月中ころ終結したこと、全逓は、これに引き続き同年六月一七日から七月二八日まで合理化反対闘争を実施したこと、別紙第一の1の(一)の(5)の行為は、合理化反対闘争の一環としての下谷局への機械搬入阻止闘争に参加するため、全逓の動員指令に従って有給休暇の請求をしたが認められなかったために欠勤をしたものであること、別紙第一の4の(二)の(5)ないし(7)の行為は春闘の際の杉並局の組合員の抗議行動の一環として行われたものであること、右春闘及び合理化反対闘争に関し、同年八月二日全逓組合員に対し大量の懲戒処分が発令され、杉並支部においても、減給三月一名、減給二月一名、減給一月一名、戒告一名計四名が懲戒処分を受けたが、原告はこのうち戒告の処分を受けたことが認められる。

また、(証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、全逓の昭和四四年の年末闘争は同年一一月一六日に始まって、一二月五日妥結したが、この闘争における主要な戦術は業務規制闘争であったこと、別紙第一の3の(二)の(7)ないし(9)の行為4の(二)の(8)の行為は右闘争期間中にその闘争の一環として行われたものであること、右闘争に関し、杉並支部の組合員について、昭和四五年一月一四日解雇一名、減給六月二名、減給四月一名、減給三月二名、減給二月四名、減給一月四名、戒告三名の計一七名、同月一九日減給一二月二名、戒告三名の計五名、合計二二名が懲戒処分を受けたが、原告はこのうち減給二月の処分を受けたことが認められる。

更に、(証拠略)及び原告本人尋問の結果によれば、東京郵政局においては、杉並局における滞留郵便物の増加に対する対策として約二六名の東京郵政局職員を杉並局に派遣して、杉並局の職員の業務遂行方法の改善、指導等を行うこととしたこと、これに対し、杉並支部の組合員はこれに反発して激しい労使紛争が発生し、全逓は、当局側のこのような労務政策の変更を求めて、いわゆる労務政策変更闘争を展開したが、この闘争は同年四月九日一応妥結したこと、この闘争において全逓が採用した主な戦術は業務規制闘争であること、別紙第一の1の(一)の(7)の行為は、全逓が実施した一斉休暇闘争に参加するためにした年次有給休暇の請求が承認されなかったので、欠勤をして右休暇闘争に参加したものであること、別紙第一の2の(一)の(2)のア、イ、ウの行為、2の(三)の(2)のア、イ、ウの行為、3の(二)の(10)から(32)までの行為、4の(二)の(9)から(16)までの行為は、いずれも組合の指導の下に業務規制闘争として行われたもの、又はこれに関連して発生したものであること、右闘争に関し、杉並支部の組合員について闘争期間中の昭和四五年二月一三日停職一月一名、減給六月一名、減給三月二名、減給二月四名、減給一月四名、戒告二名計一四名が懲戒処分を受けたが、原告は、同年二月七日までの行為を理由として減給六月の処分を受けたこと、更に、闘争終了後、杉並支部の組合員につき、同年五月二日付けで、減給一月一一七名の処分がされ、同年六月六日付けで懲戒免職一名、停職二月一名、減給一〇月二名、減給八月二名、減給六月一名、減給五月一名、減給三月四名、減給二月一名、減給一月一三名、戒告一名計三七名が懲戒処分を受け、原告と訴外浦郷永之は同日付けで分限免職の処分を受けたことが認められる。

以上認定のとおり、本件処分の理由とされた具体的事実の多くは、全逓全体又は杉並支部が実施した闘争期間中に行われた行為であるということができるけれども、そのことから直ちにこれを分限免職処分の理由としてはならないということにはならないことも当然である。右に認定した闘争期間中の行為であっても、別紙第一の2の(一)の(2)に記載したような郵便物取扱作業従事中の喫煙行為は到底組合の指令による行為とは評価できず、郵便物を取り扱う職員としての責任感に欠ける行為であるといわなければならない。別紙第一の2の(三)の(2)に記載した勤務時間中の離席や雑談についても同様の評価が可能である。1(一)の右事実のうち、(1)、(3)、(4)、(6)及び(8)の行為は、組合の指令とは関係のない原告の個人的行為であって、勤務の当日になって無断で欠勤したものであり、これに対して反省の態度もうかがわれず、郵便局の職員として責任感に乏しい行為であり、弁明の余地がない行為といわなければならない。加えて、別紙第一の1の(二)、別紙第一の3の(二)の(1)から(32)までに記載した作業能率については、いずれも闘争期間中の行為であるが、(5)及び(6)の取集便礼を一括差し入れた行為は、組合の指令に基づく行為とはいえないし、全部の郵便ポストから取集めをしていないのにこれを取り集めたかのごとく偽装したもので、郵便事業に対する利用者の信頼を損う行為であるといわなければならず、その余の行為は、おおむね組合の指令に従って作業能率を低下させたものであって、このことにより、原告の作業能率が一般に低かったものと認めることはできないけれども、原告の作業態度は上司に反抗的であり、単に組合の指令に従ったというだけではなく、自ら率先して作業能率を著しく低下させたものと評価することができるのである。また、別紙第一の4の(二)の(1)ないし(16)の各行為も、いずれも闘争期間中の行為であって、上司から業務能率を低下させないように注意されたこと等に対して反発、抗議をしたものであり、闘争期間中の管理者と組合員との間の対立している状況下で行われたという事情を考慮して評価しなければならないけれども、必ずしも組合の指令に従って行ったものというわけでもなく、原告の性格や平素の上司に対する態度がこのような機会に出現したと評価できる面もある。更に、別紙第一のような遅刻が極めて多いことは、無断欠勤と同様責任感に乏しいものと評価することができる。

3  以上のように、原告の行為を全体的に評価すると、無断欠勤や遅刻、勤務期間中の服務規律無視の態度は、組合員としての行為とはいえない事実であり、また、上司に対する暴言、侮辱的言辞や反抗的言辞も闘争期間中の当局と組合との対立した状況下で行われた行為ではあるが、組合の指令に基づいたものとはいえないし、更に作業能率の低下についても組合の闘争指令に従ったとはいえ、みずから率先して作業能率を著しく低下させたということができるのであって、これらの事実を総合して考えると、原告は郵政職員として必要な適格性を欠くと評価されてもやむを得ないものと解することができる。

そうであるとすれば、被告が右各事実及び過去に四回懲戒処分を受けたことを考慮して原告につき官職に必要な適格性を欠くとして分限免職の処分をしたことについては、相当な理由があったというべきである。

四  むすび

よって、本件処分の違法を主張する原告の請求は、理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 今井功 裁判官 星野隆宏 裁判官藤山雅行は転任のため、署名押印をすることができない。裁判長裁判官 今井功)

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